「万引き家族」をまだ観ていない人へ。
万引き家族 とは言わずもがな、カンヌ国際映画祭における最高賞パルムドールを受賞した作品であり、是枝監督がその構想に10年近くの年月を費やしたことでも知られる映画です。
評論家でもなんでもない私が映画について語るのはおこがましいので
自分の覚え書き程度に書き留めておきます。
以下ネタバレはございません。抽象的な感想のみです。
まずこの映画は“考えさせられる”映画です。
他の様々な作品にありがちな「家族とはこうあるべきだ」「家族の絆は強い」などといった単純なメッセージ性を含んだ映画ではありません。
作品の作り手としては、どうしてもメッセージ性というものを含ませたくなってしまうものだと思います。ですがそれが単純な形で表れていないことで、すごく不思議な感情を引きずることになります。
映画では明らかにされていないが小説では明らかにされている、という点がいくつかあります。
そのため映画を見終わった後は疑問が残って然るべきなのですが、小説と答え合わせをしてみると、映画で「描かれていない」→「描かれていたかも」に変わるのです。
あそこのあのシーンがそれを意味してたのか、、と。
噛み締めることができます。無駄なシーンがありません。
物語は後半に向けて加速していきます。ここで注目すべきなのは後半の軸となるシーンがアドリブであるということです。
池脇千鶴さんと高良健吾さんがどんな質問を投げかけてくるのか、家族は知らずに撮影をしていたそうです。
特に安藤サクラさん。物語の中で、このシーンの演技に最も心を打たれたと言っても過言ではありません。そこで絞り出した台本に無い言葉。
ちなみに、リリー・フランキーさんと子役の城桧吏さんは後半のみでなく全編台本なし。台詞や動きは監督から当日告げられる形だったそうです。
血が繋がっていないのに守りたい、
血が繋がっていないから呆気ない、
血が繋がっているのに惨い、
声に出して言えないこと、
声に出さなくても伝わる思い
家族を家族たらしめるものとはなんなんだろう。
そんな場面が入り混じってのラストシーン。
それがあのシーンであるからこそより深く考えさせられる。
そして、私はこの映画に温かさよりも強く冷たさを感じます。
社会の底辺というのか、、その暮らしぶりが残酷なまでにリアルに描かれています。
食事のシーン一つとっても、下品で情けなく。
あの家族のような人に出会ったことがない人も日本にはいるんだろう。
だからこの映画がどれだけリアルか分からない人も絶対にいる。
胸がしめつけられる思いでした。
そんな映画でした。どうぞご覧になってください。